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以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2017/03/27(月) 23:18:47.56 :
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「傘があらへん」
隣でぽつりと呟かれた言葉が、水っぽい空気に溶けた。
奈緒さんは掌を上にして、空を見上げている。
視線はさておき、ポーズはついさっき飴をねだられた時そのままだった。
もう一つ飴を載せたら雨は止むだろうか、なんてつまらないことを考える。
レッスン終わりの夕方五時、事務所への帰り道に二人で赤信号に捕まっていた。
三月も終わりだというのに、まだまだ肌寒い。
こんなに寒いと桜の開花に影響があるんじゃないかと思っていたら、やはり平年よりも遅いとニュースでやっていた。
それでも来週には咲くらしいから、桜もなかなか頑張り屋さんなのかもしれない。
まだコタツをしまっていないと自慢げに言う奈緒さんとは大違いだ。