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以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/04/21(金) 19:14:57.54 :
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担当アイドルの南条光が倒れたのは、およそ三十分前のことだ。
児童養護施設を兼ねたミッションスクール、その大聖堂にてLIVEを終えた直後、光は糸が切れたようにへたりこんでしまった。
顔は熟れた果物より赤く、呼吸は浅く、その憔悴ぶりは明らかに尋常のそれではない。
今になって思い返すと、光は今日のチャリティーLIVEに日頃以上の力を注いでいた。
〝正義のヒーロー〟という趣旨で活動してるから、子供の期待に応えるべく追い込みをかけていたのだろう。
アイドルのイメージを守ることに張り切りすぎる傾向は知っていたし、本人もそのことは理解していて、意識的に休憩を取るようにしていたのだが。
打てば響くように育つ彼女に絆され、俺は必要以上の自主練を許してしまっていた。
少年のように有り余る活力を目にして、より成長した姿が見たくなり――そう意欲に甘え、適度な休憩だけではケアしきれないほど疲労を蓄積させてしまった結果が、この現状だ。
バーンアウトに陥った原因は俺の判断にあるのだから、体調を取り戻せるように看病しないといけない。
肩で息する光を担ぎ、休める場所を探し出す。
大聖堂からしばらく離れた休憩室には、幸い先客は居なかった。
清潔なベッドに彼女を寝かし、冷汗シートや生理食塩水の買い出しに出かける。
道中で事務所への諸連絡を済ませ、赤いブローチを着けた修道女から部屋を借りたことの事後承諾を得た。
その他庶務も片付けて休憩室に戻り、ドアノブを握ると、部屋からくちゃくちゃと微かな音。
踏みとどまってドアに耳を当てると、苦しげな呻きがして焦燥を煽られる。
まさか、光の容態が悪化したのではないか――強い不安に駆られて、俺は部屋へと踏み入った。
「光、体調は大丈夫、……か……?」
「……えっ! あっ、ぷ、プロデューサー、もう、戻って……!?」
酷く動揺して応じた声は、間違いなく南条光のもの。
けれど眼前で佇んでいるのは、光であって光でなかった。
LIVE時のスマートな衣装に代わり、ランジェリーとボンテージが設けた不義の子を想起させる薄布が、滑らかな白肌を締め付けている。
両側頭部からはヤギを連想させる皺深い角が生えていて、ハート型の弧を頭頂に彩っていた。
露出した下腹にもまたハートの模様が彩られていて、デフォルメした子宮を連想させられる。
明らかに人から逸脱した装いは、古来より語られるサキュバスそのものだ。
愕然として凍り付いた彼女は、しなやかな細腕を引き締まった両脚の間に伸ばしている。
部屋に入る前にした水音、上気した頬、内側へ折り曲がったしなやかな指。
誰だろうと誰からも隠すことをしているのは、誰の目からも明らかだ。
最悪のミスを犯したと気付き、思考停止して立ち尽くす。
もっとも、一番最悪と思っているのは、俺より彼女の方だろう。
「……み、みっ、見ないで、見ないでくれっ!
何もっ、何も見ていない! そうだろっ!?」
矢継ぎ早に少女が羞恥を叫び、『あっちに行け』のジェスチャーを繰り返す。
突然の出来事に何も考えられなくなって、命じられるがまま踵を返した。